「南アフリカにおける自由のための長い歩みにおいて、芸術と音楽は決して単なる表現ではなく、抵抗、記憶、そして希望を奏でるものでした。写真は多くの人びとが覆い隠そうとしてきた真実を浮かび上がらせ、不正義を顔と物語をもつ現実として示してきました。そして音楽は、国境を越えて勇気を運び、抗う声を結び合わせてきました。そうした創造の力は、抑圧のなかにあっても失われない尊厳を人びとに思い起こさせるとともに、世界が引き受けるべき責任を照らしてきたのです。新生南アフリカ建国の父ネルソン・マンデラ元大統領は、自由はまず心のうちに芽生え、人びとの想像力と勇気によって支えられていくのだと語りました。芸術には、その両方を呼び起こす力があります。
今、こうしてともに立ち止まり、思いをめぐらせるなかで、私たちはその遺したものにあらためて思いを馳せます。創造することは、不正義に抗い、人間らしさを取り戻し、正義へと向かう道に光をともすことを可能にします。ここに集う写真と音楽が、これからも共感を呼び覚まし、ためらいの先へと踏み出す勇気につながっていくよう願っています。」
— シヤブレラ・マンデラ (平和・人権分野のリーダー、研究者、国際外交ストラテジスト)
2025年7月、KYOTOGRAPHIEの共同創設者/共同ディレクターであるルシール・レイボーズと仲西祐介は、南アフリカを訪れる旅に出ました。さまざまなアーティストやキュレーターと出会い、南アフリカを代表するいくつかの芸術機関も訪ね歩きました。そして、この地に息づく鮮やかで生き生きとした成熟した写真文化を、日本でも紹介したいという強い思いを胸に帰国します。
同時にふたりは、世代を超えて今なお人びとに深く刻まれている、アパルトヘイト(人種隔離政策)の歴史にも触れることになりました。アパルトヘイトに抗う闘いは、近現代において連帯と抵抗がもっとも鮮明にあらわれた出来事のひとつです。しかし日本では、この人種隔離という暗い歴史に対する認識が十分に広がっているとは到底いえません。KYOTOGRAPHIE 2026では、この地域に焦点をあてた特別プログラムとして展覧会やイベントを行い、理解を深め、対話を生み出す場をひらきます。
このプログラムの核となるのは、南アフリカの3世代の写真家による展示です。アパルトヘイト政策下の実態を克明に記録したアーネスト・コール、生と死、そしてそのそのはざまで迎える数々の節目について考察を巡らせるーター・ヒューゴ、語り継がれてきた歴史と記憶を多面的かつ個人的に掘り下げるレボハン・ハンイェの展示を開催します。そして1940年代から現在に至るまでの南アフリカ写真文化の歩みをたどる写真集を紹介するケープタウンのA4 Arts Foundationの展示も開催します。
本プログラムの理解をより深めるため、ネルソン・マンデラのひ孫にあたるシヤブレラ・マンデラ氏を迎え、4月19日に基調講演およびシンポジウムを開催します。トークイベントでは、ジャーナリストのジリアン・ウルフがモデレーターを務め、出展作家のレボハン・ハンイェ、ピーター・ヒューゴ、A4 Arts Foundationの展示のキュレーターであるショーン・オトゥール、そしてミュージシャンのMsakiが登壇し、芸術と音楽の役割について語ります。また、姉妹フェスティバルである音楽祭KYOTOPHONIEでは、南アフリカの音楽家Msaki × Tubatsiによるライブパフォーマンスも予定しています。
世界が不安定な瀬戸際(EDGE)に立たされているような現在において、本プログラムは制度としての「隔離」が残した傷跡がいまなお色濃く残る南アフリカという国について考える場を生み出します。世代や立場をこえた「声」が集うことで、本プログラムは危機の時代において、歴史を批判的に見つめ返しながら「写真」の役割について問い続けるというKYOTOGRAPHIEの使命を、さらに拡げていきます。
Exhibitions 展示
3世代にわたる南アフリカのアーティストとフォトブックライブラリーを通して、同国の政治的歴史と豊かな写真文化を紹介します。
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A4 ARTS FOUNDATION
Photo book!
Photo-book!
Photobook!In collaboration with A4 Arts Foundation
八竹庵(旧川崎家住宅)
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LEBOHANG KGANYE レボハン・ハンイェ
記憶のリハーサル
Presented by DIOR
東本願寺 大玄関
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ERNEST COLE アーネスト・コール
囚われの地
Supported by Cheerio
In collaboration with Magnum Photos京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階
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PIETER HUGO ピーター・ヒューゴ
光が降りそそぐところ
京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階
Music Events 音楽イベント
アフリカンフォーク、ジャズ、ソウルを融合させた音楽で注目を集める南アフリカのアーティスト、ムサキとトゥバツィが来日。京都の印象的な地下空間で、親密かつ力強いライブパフォーマンスを披露します。
Talk Events トークイベント
トークやツアーを通して理解を深めるプログラムを展開し、シヤブレラ・マンデラを迎えたシンポジウムへとつながります。
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2026.4.18 15:30―16:30
エキシビジョンツアー:アーネスト・コール
京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階
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2026.4.19 11:00―12:00
アーティストツアー:レボハン・ハンイェ
東本願寺 大玄関
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2026.4.18 13:00―14:00
アーティストツアー: ピーター・ヒューゴ
京都市京セラ美術館 本館 南回廊 2階
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2026.4.18 10:30―11:30
エキシビジョントーク: A4 Arts Foundation
八竹庵(旧川崎家住宅)
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2026.4.19 13:30―15:30
South Africa In Focus シンポジウム
東本願寺視聴覚ホール(新参拝接待所)
Masterclass マスタークラス
南アフリカ出身の写真家、ピーター・ヒューゴ本人から直接学べるこの貴重な機会をお見逃しなく。