LEBOHANG KGANYE レボハン・ハンイェ
SOUTH AFRICA IN FOCUS
Presented by DIOR
キュレーター:マリナ・パウレンカ
ヨハネスブルグを拠点とするレボハンにとって、物語を紡ぐ営みとは、 言葉、写真、彫刻、そしてオーラル・ヒストリーを横断する多層的な表現である
レボハン・ハンイェが写真に出会ったのは偶然でした。もともとはジャーナリズムを志していましたが、進学が叶わず、デイヴィッド・ゴールドブラットによって設立された名高いMarket Photo Workshopに入学したことで、自身の進むべき道を見つけることになります。彼女の表現は現在、写真にとどまらず、アニメーション、インスタレーション、テキスタイルヘと広がり、文学や演劇、歴史への深い関心とも結びついています。
ハンイェは、KYOTOGRAPHIE 2026 で日本初となる大規模な個展を開催します。今回取り上げるのは、〈Keep the Light Faithfully〉〈Mohlokomed i wa Tora〉〈Mosebetsi wa Dirithi〉〈The Sea Is History〉 〈Ke Lefa Laka: Her-story〉という5 つの重要なシリーズです。これらの作品群は、個人史と歴史的物語がどのように形成され、断片化され、そして再び構築されていくのかを探っています。
切り抜かれたシルエット、演出写真、ジオラマのライトポックス、布や影、彫刻的な介入—。ハンイェはこうした多様な技法を通じて、南アフリカの個人的な記憶の断片が、より広い政治的かつポストコロニアルな現実と重なり合う層状の世界をつくりあげています。これらのシリーズを通じて、ハンイェは、未完のアーカイブを受け継ぐとはなにを意味するのか、空白をどのように埋め、他者の歴史をどのように守るのか、そしてときに「虚構」こそがより誠実なかたちで「真実」を照らすことがあるのはなぜなのか、その倫理を問い続けています。
Gladys, 2022 © Lebohang Kganye
Setupung sa kwana hae II, 2013 © Lebohang Kganye
Woman in middle of night, 2022 © Lebohang Kganye
artist アーティスト
Lebohang Kganye レボハン・ハンイェ
1990年南アフリカ生まれ。写真、歴史、リサーチ、演劇性、自伝性、詩的表現を重ね合わせ、時として彫刻的なインスタレーションに昇華するアーティストである。ベルリン写真美術館、テート・モダン、Foam(オランダ)、LE BAL(フランス)など著名な機関で展覧会を開催。主な受賞歴にドイツ証券取引所財団賞(2024)、ICPインフィニティ賞(2025)、Foamポール・ハフ賞(2022)などがある。ハンイェの作品は、メトロポリタン美術館、ポンピドゥー・センター、スミソニアン国立アフリカ美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館、パリ市立近代美術館、ヒューストン美術館、ゲティ美術館、チャゼン美術館など、多くの美術館に収蔵されている。
現在MoMA(アメリカ)で開催中のグループ展「New Photography 2025: Lines of Belonging」に出展している。