THANDIWE MURIU タンディウェ・ムリウ
KYOTOGRAPHIE African Residency Program
極彩色の代表作〈CAMO 〉と、京都での滞在制作から紡ぎ出された新作、 テキスタイルの色や柄を読み解きながら制作された作品を2 会場で展示
タンディウェ・ムリウにとって写真は、自らの文化的なルーツをたたえるための方法であり、同時に、アイデンティティを形づくる文化的要因について問いを投げかけるための手段となっています。KYOTOGRAPHIE のアフリカン・アーティスト・イン・レジデンスとして招聘されたケニア出身のムリウは、その代表作と、京都で生まれた新作を展示する2つの展覧会を発表します。
女性として、ケニアで男性優位の構造のなかで生きてきたムリウは、社会における女性の役割、伝統がどのように機能しているか、そして自分自身をどう見つめるかという問いに、繰り返し向き合ってきました。こうした経験が〈CAMO〉シリーズの着想につながり、そのなかで被写体は背景のなかへと姿を消しつつ、同時に「自身を写し返すキャンバス」として立ち上がります。そして、日々の暮らしのなかにある日用品と、アーカイブ写真に着想を得た髪型が、ひとつひとつのイメージに隠された意味として織り込まれています。また、各写真にはアフリカのことわざが添えられ、ムリウは視覚表象を通して文化を伝えるとともに、世代を超えて受け継がれてきた口承の知恵をそこにそっと息づかせています。
〈CAMO 〉に加えて、ムリウは京都でのレジデンス期間で新たに制作した作品も紹介します。ムリウ自身はこれまで来日したことはありませんでしたが、布やテキスタイルの歴史を辿る過程で、日本という存在に何度も行き当たったと言います。こうした関心を広げながら、日本で古くから用いられてきた布や文様を作品に取り入れ、ケニアと日本に通じる視覚言語のつながりや、その重なり合う歴史について探求しています。
©Thandiwe Muriu, Courtesy 193 Gallery
artist アーティスト
Thandiwe Muriu タンディウェ・ムリウ
アイデンティティ、カルチャー、女性のエンパワーメントといったテーマを作品を通して探求するケニア出身の写真家。ムリウの作品は、主にアンカラ(*1)や東アフリカのカンガ布といったテキスタイルの物語から着想を得ており、それらの布をキャンバスとして再定義し、称え、記憶するために作品に用いている。現在もケニアを拠点に活動し、ラゴス芸術センター(ナイジェリア)が主催した第60回ヴェネツィア・ビエンナーレのコラテラルイベント(*2)「Passengers in Transit」、「WAX!」展(人類博物館 パリ)、ニューヨーク大学での個展「I Am Because You Are」など、世界各地で作品を発表している。また、ロックフェラー財団ベルラージオ・センターのレジデンス・プログラムや、ケニア国立博物館のレジデンス・プログラムにも参加している。
*1 主に西アフリカで幅広く使用される、鮮やかでカラフルな柄のろうけつ染めの布。別名ワックスプリント。
*2 ヴェネチア・ビエンナーレと同時期に近隣で開催される企画展。
Venue 会場
出町桝形商店街 ― DELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Space
- 住所
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京都市上京区三栄町62
- アクセス
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京阪「出町柳」駅5番出口から徒歩5分