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Laetitia Ky レティシア・キイ

LOVE & JUSTICE

Supported by Cheerio

セノグラファー:team raw row

コートジボワールで育ったレティシア・キイにとって、「自分」という感覚は、美しさや肌の色、髪の質感に至るまで、植民地期の美意識に影響され、ストレートな髪質や明るい肌の色こそが成功や美しさの象徴とされてきました。キイは、家族の女性たちが肌を漂白し、自身も頭皮が焼けつくような薬品で髪をストレートに伸ばす施術を何度も経験しました。しかし16歳のとき、ある化学薬品による処置に失敗し、髪がさらにひどいダメージを受け、ほとんどが抜け落ちてしまいました。その出来事をきっかけに、彼女は髪を再び伸ばす方法を探し始め、自然な髪を受け入れることを目指すアメリカのコミュニティと出会います。そして、そもそもなぜ自分の髪を変えようとしてきたのかを、根本から問い直すようになります。そのとき、彼女は大胆にもすべての髪を剃り落とし、やり直すことを心に決めたのでした。
 けれども、自分の髪本来の質感を愛するまでには長い時間がかかりました。社会が祝福してこなかったその髪質を受け入れるために、彼女はまず、認識を矯正しなければなりませんでした。その矢先、彼女は、ある写真のアルバムと出会います。それは、植民地支配以前のアフリカの女性たちの髪型の写真を集めたものでした。その髪は彫刻的で、精巧で、抽象的で、まるで芸術作品のようでした。さらに調べるうちに、植民地時代以前の社会では髪の毛は重要な自己表現の手段でありコミュニケーションの手段でもあったことを知ります。そこにはひとりひとりの生き方、結婚の有無、職業、そして社会的な役割が込められていました。これまで自分が消し去ろうとしていたものが、どれほど大きな力を秘めていたのかに気づいたのです。自分を受容していくためにはじめた旅はやがて、芸術的な探求へと姿を変えました。そうして彼女は自らの髪で彫刻のような造形を作り、自己表現や文化的誇りの物語をそこに織り込むようになったのです。

©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2025

©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2025

Motherhood, 2020, Abidjan
© Laetitia Ky

Motherhood, 2020, Abidjan © Laetitia Ky

free, 2022, Abidjan
© Laetitia Ky

free, 2022, Abidjan © Laetitia Ky

feminist, 2021, Abidjan
© Laetitia Ky

feminist, 2021, Abidjan © Laetitia Ky

artist アーティスト

Laetitia Ky レティシア・キイ

自己愛、文化的アイデンティティ、エンパワーメントをテーマに活動するアーティスト、アクティビスト、起業家。イノベーティブな手法で知られるキイは、自身のプラットフォームを用いて黒髪の美しさと文化的意義を探求することでポジティブなセルフイメージを発信し、時として社会規範に異議を唱える。キイの作品、とりわけ髪の彫刻は、一人ひとりが自身のアイデンティティや境遇を肯定できるように人々を勇気づけている。キイはファッション、映画、文学の領域でも活動し、初の著書『LOVE AND JUSTICE』では、コートジボワールの平等をうたう活動家であるキイの視点が言葉と画像とともに解き明かされている。
出町桝形商店街 とDELTA/KYOTOGRAPHIE Permanent Spaceでは、キイが2024年冬にKYOTOGRAPHIEのアフリカンアーティストインレジデンシープログラムで京都に滞在し制作した、自身のアイデンティティを体現するかのような新作のポートレートを展示する。

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