Stories

2019.12.05

2016年 第4回 :「Circle of Life いのちの環」

直線的な時間の中で、人はただ、出来事から遠ざかってゆく。我々が時間のそうした直線性を信じるのは、積極的な意味では成長を、否定的な意味では老いを知っているからである。幼い日の愚かさと決別できるというのはありがたいことだが、せっかく得たものを少しずつ失ってゆくのは寂しい。そして、その終極に待ち構えている死は、生によって得られた一切を放棄せよと命じる。それはなるほど、誕生の瞬間の可能性とは、対極的である。

平野啓一郎(KYOTOGRAPHIE 2016 カタログより抜粋)



クリスチャン・サルデ『ベニクラゲモドキ Oceania armata』不老不死といわれるプランクトン、2012年 ©Christian Sardet and The Macronauts / Plankton Chronicles Project

PLANKTON 漂流する生命の起源
supported by BMW
クリスチャン・サルデ:写真・映像
高谷史郎:インスタレーション
坂本龍一:サウンド
京都市美術館別館 2階

生命の起源ともいえるプランクトンの美しさや多様性を広く伝えるため、顕微鏡写真や映像でプランクトンの姿を撮影する海洋生物学者のクリスチャン・サルデ。本展では、サルデが昨年秋にマクロノーツとともに下田にて撮り下ろした最新作や、自身が乗船し世界規模で調査 ・研究を行う「タラ号海洋プロジェクト」にて撮影された作品をあわせて披露した。ビデオインスタレーションを手がけるのは京都在住の映像作家の高谷史郎、サウンドは坂本龍一が担当。


アルノ・ラファエル・ミンキネン「Narragansett」、1973年 ©Arno Rafael Minkkinen courtesy PUG OSLO

YKSI: Mouth of the River,
Snake in the Water, Bones of the Earth
アルノ・ラファエル・ミンキネン
両足院(建仁寺内)

森や湖などの美しい自然とともに、一糸まとわぬ自身の姿を撮影するアルノ・ラファエル・ミンキネン。展覧会タイトルにある“YKSI”は、フィンランド語で「1」を意味する。独自のスタイルで国際的に高く評価される彼の、国内初となる本格個展となる。居をかまえるフォスターズ・ポンド(アメリカ・マサチューセッツ州)や世界各地で30年近くにわたって制作してきた作品群と、京都で撮り下ろした最新作を披露した。


ティエリー・ブエット「生後9分の女の子」、2008年 © Thierry Bouët

いのちは存在するかぎり、あらゆるものとつながり、その関係性を育み、そして死や消滅を迎え、時として新たないのちに還元されます。生まれ出たひとつひとつのいのちにはその存在理由があり、小さないのちの環は、他のいのちの環とつながり、より大きな環の一部となります。

地球の悠久の時間軸をあらわす縦の環と、その広大な地球を物質的につなぐ横の環。新緑の美しい頃、 鑑賞者はKYOTOGRAPHIEでインスピレーショナルな作品と出会うことで、あらゆるいのちが紡ぐ大いなる循環に導かれ、自身に脈々と受け継がれる物語に耳を澄ますことでしょう。皆様の「いのちの環」に新たな環がつながることを祈りながら。

2014年
KYOTOGRAPHIE共同創設者/共同ディレクター
ルシール・レイボーズ&仲西祐介