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プランクトンとは地球上の水域に浮遊して生きる水生生物の総称。およそ35億年前に現れたこの神秘の生命は、ほとんどがミクロン単位の微小な大きさのため肉眼で見ることは難しいが、すべての食物連鎖の基礎となり、酸素の半分を生成しているだけでなく、石油・天然ガスといったエネルギー資源のもととなってきた。そんな生命の起源ともいえるプランクトンの美しさや多様性を広く伝えるため、顕微鏡写真や映像で世界中のプランクトンの姿を記録し公開するのはフランス国立科学研究センター名誉ディレクター、クリスチャン・サルデである。世界規模で調査・研究を行う「タラ号海洋プロジェクト」の共同設立者でもあるサルデは、自らも乗船し世界中の海で精力的にプランクトンの撮影を行っている。彼が製作したドキュメンタリーやアニメ、DVD作品は数々の賞を受賞しているが、中でも欧州分子生物学機構によって授与されたヨーロッパ賞は、生命科学の広報活動が評価されてのもの。日本では、河出書房新社より『美しいプランクトンの世界』(2014年)が刊行されている。本展ではサルデがこれまでに撮影した写真・映像に加え日本の下田で撮り下ろした最新作や、マイクロプラスチック(海中の微小のゴミ)の問題に触れた作品などを展示予定。
 
撮影・編集協力:マクロノーツ/ノエ・サルデ & シャリフ・ムシャク
メディア・オーサリング:古舘 健
サウンド・プログラミング:濱 哲史

Radiolarian measuring about 0.1 mmm © Christian Sardet CNRS / Tara Oceans / PlanktoChronicles

クリスチャン・サルデ「放散虫、スポンゴディスクス属のSpongodiscus biconcavus」、2015年 © Christian Sardet and The Macronauts for KYOTOGRAPHIE / Plankton Chronicles Project

展示インスタレーションは日本を代表する映像作家の高谷史郎が手がける。
1963年奈良県生まれ。京都市立芸術大学環境デザイン科在学中より、国際的に活躍するアーティスト・グループ「ダムタイプ」に創設メンバーとして参加し、映像、照明、グラフィック、舞台装置等々、幅広く手がける。並行して1998年よりソロ活動を開始。最先端の技術を駆使した表現で、日本を代表する映像作家として多彩な活動を行ってきた。また、気候変動について考えるための北極圏遠征プロジェクトCape Farewell(イギリス)に日本人アーティストとして初めて参加するなど、自然現象への深い関心をよせる。
パフォーマンス作品には「CHROMA(クロマ)」(2012年)、坂本龍一、野村萬斎とのコラボレーション作「LIFE-WELL」(2013年)等があり、2015年には新作「ST/LL」がベルギーおよびフランスで上演され、喝采をあびた(2016年1月びわ湖ホールにおいて凱旋公演)。主な個展に「明るい部屋」(2013年、東京都写真美術館)などがある。

インスタレーションのサウンドは音楽家 坂本龍一が手がける。
音楽家。1952年東京都生まれ。78年『千のナイフ』でソロ・デビュー、同年YMO結成に参加。YMO散開後、88年映画「ラスト・エンペラー」でアカデミー賞作曲賞を受賞するなど、常に革新的なサウンドを追求する姿勢は世界的評価を得ている。2007年には「more trees」を設立し森林保全と植林活動を行なうなど90年代後半より環境問題などへ積極的に関わる。東日本大震災後、「LIFE311」、「こどもの音楽再生基金」、「東北ユースオーケストラ」などさまざまな被災者支援プロジェクトに関わるとともに、脱原発・非核を訴える活動もおこなっている。音楽とアートを横断する柔軟な視点と、歴史・思想・哲学まで包含する幅広い知識に対してアートの分野からも信頼が厚く、2014年札幌国際芸術祭(SIAF)のゲスト・ディレクターに就任するなど、アート界への越境も積極的におこなっている。
主な作品に『B-2 UNIT』(1980年)、『BEAUTY』(1989年)『LIFE』(1999年)、『THREE』(2012年)などがある。「LIFE-WELL」(2013年)等では高谷史郎ともコラボレーションをおこなっている。

京都市美術館別館 2階

〒606-8342 京都市左京区岡崎最勝寺町13
地下鉄東西線「東山」駅 1番出口から徒歩10分
京阪「神宮丸太町」駅 2番出口から徒歩13分

OPEN:9:00-17:00
CLOSED:月曜

¥800 / 学生 ¥600

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